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そんなわけで今大会は、イタリアの6大会ぶり4度目の優勝とジダンの頭突きで閉幕と相成った。31日間の大会も、終わってしまったら実にあっけないものであった。決勝の舞台ベルリンからフランクフルトに戻ってみると、もうレプリカのユニを着て歩いている人なんて、ひとりもいやしない。 ワールドカップが終わった、という実感。それは、試合後に派手に花火が打ち上がる瞬間ではなく、単に翌日から突如として日常が始まるという、至極当たり前な時間の流れの中で痛切に感じるものなのだと、あらためて気付かされる。 さて、ドイツからお送りしてきた当連載も今日で終わり。最後に誰に登場してもらおうかとレーマー広場をぶらついていたら、この人、というかライオンくんに出くわした。今大会のマスコット、ゴレオ6世である。やれ「かわいくない」だの「なぜライオン?」だの「パンツを履いてないのが変」だの、さんざんな言われようだったが、当ライオンはこの大会をどう過ごしたのだろうか。正確なコミュニケーションがとれるかどうか、どうにも不安ではあるのだが、とにかくチャレンジしてみることにした。 どうも、このたびはお疲れさまでした。大会期間中はあちこちのスタジアムに移動して、さぞかしお忙しかったと思いますが、今大会が終わってみて、いかがでしたか? 「……」 うーん、相当お疲れみたいですね。それにしても、グループリーグは1日に3試合ありましたよね。15時フランクフルト、18時ドルトムント、21時ハンブルクとか。移動はどうされていたんです? FIFAが専用機を出してくれたんですか? 「……」 影武者がいる」という噂も耳にしたんですけど、実際はどうなんでしょう? 「……」 いや、答えたくないんなら、別にいいんですけど。そういえば試合中にゴールが決まると、はしゃいでいる貴方が会場のスクリーンに登場しますよね。でも、もうちょっと空気を読んだほうがよかったのでは? イタリア戦でのドイツの失点の時のはしゃぎようは、だいぶホスト国の人々の心を傷つけたようにも思えるのですが。 「……」 まあ、仕方ないですよね。愛嬌を振りまくのが、マスコットの仕事なんですから。 それにしても人間の目から見ると、やっぱり貴方がパンツを履いていないのが、非常に奇異に思えてなりません。そりゃ、くまのプーさんも履いてないじゃないか、という反論もあるでしょう。でも、サッカーシャツを着てスパイクも履いているのに、パンツだけがないというのは、そこに明らかな意図を感じてしまうわけですよ。ぶっちゃけ言いましょうか。貴方、パンツを履かなかったことで、商業面で相当に損をしていますよ。どうなんです、その点については? 「……」 そうですね、終わったことをあれこれ言っても詮無きことですよね。 話題を変えましょう。ご出身はボツワナとか。4年後の開催地である南アフリカから、そんなに遠くないですよね。 「……」 4年後はぜひ、いちファンとして、大会を愉しんでください。私も行けるかどうか分かりませんが、頑張ってみることにします。今大会は本当に、お疲れさまでした! ということで、昨日でお役ご免となったゴレオくんに別れを告げて、私も日本に帰国することとなった。さらば、ドイツ。さらば、ゴレオ6世。そうだ、お土産にゴレオくんの小さな人形を買っておこう。今回の旅の思い出のため、そして4年後のアフリカでのワールドカップに思いを馳せるために。 写真: ゴレオ6世(11) ボツワナ出身のライオン (参照) http://fifaworldcup.yahoo.com/06/jp/e/mascot.html 宇都宮徹壱/Tetsuichi Utsunomiya 1966年、東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、欧州を中心に「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。誰にも顧みられない鄙びたスタジアムと、当地で飲む酒をこよなく愛する。著書に『幻のサッカー王国』『サポーター新世紀』(いずれも勁草書房)『ディナモ・フットボール』(みすず書房)がある。 |
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