|
前回に引き続き、新年企画として今年のフットボール・カレンダーをプレビューする。北京五輪、ワールドカップ予選、Jリーグに地域リーグと、今年も国内外でフットボールのイベントが目白押しだ。底冷えのする今の季節からは想像しにくいだろうが、EURO2008が終わった7月からスタートすることにしよう。 【7月】 と思ったら、7月はこれといったイベントが見当たらない。おそらく北京五輪へのカウントダウンが秒読み段階となり、男女の代表の壮行試合が行われていることだろう。だが、他に何かないものかとあれこれ探していたら、ありました。30日、ナビスコカップ覇者とコパ・スダメリカーナ覇者による定期戦が行われる。 コパ・スダメリカーナとは、コパ・リベルタドーレスに次ぐ南米のビッグタイトルで、欧州のUEFAカップに相当する。昨シーズンはアルゼンチンのアルセナル・サランディが優勝し、ガンバ大阪と雌雄を決する。2月のパンパシフィックチャンピオンシップ同様、リーグカップ優勝チームにも、こうしたインセンティブが与えられるようになったのは、とてもよい傾向だと思う。ガンバにとっては日程的にしんどいだろうが、南米のクラブとの真剣勝負は、なかなかに得難い経験となるはずだ。頑張ってほしい。 【8月】 いよいよ北京五輪が開幕。サッカーは男子が6日から、女子は7日からスタートし、いずれも決勝は23日に行われる。会場は北京、天津、上海、瀋陽、そして秦皇島の5会場で行われ、男子は16チーム、女子は前回から2チーム増えて12チームが参加。日本は前回のアテネに続く男女そろっての出場である。 今大会、もちろん日本の活躍には期待しているが、一方で地元・中国についても密かに注目している。ただし勝利ではなく、むしろ敗北した際の振る舞いに対して、である。国家的プロジェクトとして、長年にわたって入念な強化が施されてきた中国五輪代表。過去のテストマッチでの数々の乱暴狼藉は、負けることが許されないチームゆえの奢りと余裕のなさに起因するのは明らかだ。だが優勝でもしないかぎり、いずれは敗北を受け入れるのは必定。中国五輪代表、そしてスタンドの観客が、その時、グッドルーザーの姿勢を世界に示すことができるのか、否か。そこに私は、かの国のサッカーの未来を見出したいと考える次第だ。 なお8月といえば、欧州各国リーグも開幕する。本当に一年が経つのは早い。 【9月】 五輪が終わったらワールドカップ。6日からはいよいよ、アジア最終予選がスタートする。今回は、3次予選を勝ち抜いた10チームが、5チームずつの2グループに分かれて対戦する。アジアの出場枠は前回大会同様に4.5枠。だが、今回の最終予選は、来年9月9日まで、10試合の熱戦が繰り広げられる。前回のドイツ大会最終予選と比べれば、期間は倍になり、試合数も2つ増える。4大会連続で本大会出場を目指す日本だが、今回の予選も決して楽な戦いにはなるまい。換言するなら、厳しくなければ最終予選ではない。4年に一度の息詰まる、胸を焦がす季節が、いよいよ到来する。 9月といえば、もうひとつ忘れてはならないのが天皇杯開幕。北は北海道から南は沖縄まで、今年も全国津々浦々で一斉に1回戦が行われる。元日の国立ばかりが天皇杯ではない。実のところ9月の1回戦こそが、最も天皇杯の本質を現わしているというのが、ここ数年、大会を追いかけてきた者の実感である。さて、今年はどの会場で1回戦を観戦することにしようか。 【10月】 1日から19日までは、FIFAフットサルワールドカップが開催される。89年にオランダで第1回大会がスタート。92年の第2回香港大会から4年に一度の開催となり、今回のブラジル大会で6回目の大会となる。日本は「アジアにおけるフットサルの強豪」というイメージがあるが(私自身も何となくそう思っていたのだが)、実は第1回大会と前回のチャイニーズタイペイ大会の2大会しか参加していない。しかも2大会とも、グループリーグ敗退。まだまだチャレンジの余地が十分に残されている大会なのである。そういえばフットサルの国内リーグ、Fリーグはこの時期、2度目のシーズンを迎えている。国内リーグの整備と充実が、国際大会での成績にうまく結び付くとよいのだが。 なお、4日から19日からは、AFC U-17選手権が開催される(開催地は未定)。ちなみに来年のU-17ワールドカップの開催地は、日本には思い出深いナイジェリアである。 【11月】 11月はイベントが盛りだくさんだ。 1日から16日までは、AFC U-20選手権がサウジアラビアで開催される。日本にとっては、8大会連続の世界大会出場が懸かるこの大会。これまた今回、初めて知ったのだが、来年のU-20ワールドカップの開催国はエジプトだという。なるほど2010年に向けて、来年はアフリカでの国際大会が目白押しである。 3日は、もはや年中行事となったナビスコカップ決勝。だが前述のとおり、優勝チームにはパンパシ、そしてコパ・スダメリカーナ覇者との定期戦といったインセンティブが加わり、大会の位置づけも少なからず変化していくのではないか。果たして、今年はどんな顔合わせになるのだろう。 なお下旬には、地域リーグからJFLへの登竜門である、全国地域リーグ決勝大会が行われる。年々、注目度が高まっているこの大会。もちろん今年も、現地で観戦予定だ。 【12月】 1年の総決算。国外では、バロンドールとFIFA最優秀選手が発表され、国内ではJリーグの優勝チームが決まり、J1・J2入れ替え戦での悲喜こもごもが話題となる季節である。そして、この季節の風物詩として定着しつつあるのが、FIFAクラブワールドカップ。日本での開催は、今のところ今年が最後となっている。JFAとしては、09年以降の開催地に名乗りを挙げているようだが、現在のところ、ポルトガル、UAE、オーストラリアも次期開催国に立候補している(決定は5月下旬に行われるFIFAの総会)。 聞くところによると、オイルマネーを背景としたUAEのアプローチがすさまじいらしく、日本で「クラブ世界一決定戦」が見られるのは、本当に今年が最後になるのかもしれないそうだ。これはえらいことである。トヨタカップが開催された80年以来、30年近く日本で開催されてきたビッグイベントが、遠い世界の出来事になってしまうのである。開催国枠、そしてオセアニアの処遇など、何かと改善の余地が少なくない大会ではあるが、やはり日本で見られなくなると寂しい。今年のクラブワールドカップは、さまざまな意味で、目に焼き付けておくべき大会になりそうな気がする。 以上、今年のサッカーカレンダーを駆け足でプレビューしてみた。今年も国内外では、楽しみなイベントが目白押しである。ある一定の年齢に達すると、人は新しい年を迎えることに、ある種の強迫観念や諦念を抱くらしい。だがサッカーファンである限り、今年もそうしたプレッシャーとは無縁で過ごすことができそうだ。そんなわけで、本年も『フットボールの犬』をよろしくお願いいたします。 photo:071 天安門にて…北京 2004 宇都宮徹壱/Tetsuichi Utsunomiya 1966年、東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、欧州を中心に「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。誰にも顧みられない鄙びたスタジアムと、当地で飲む酒をこよなく愛する。著書に『幻のサッカー王国』『サポーター新世紀』(いずれも勁草書房)『ディナモ・フットボール』(みすず書房)がある。 |
| << 前記事(2008/01/02) | トップへ | 後記事(2008/03/10)>> |
| << 前記事(2008/01/02) | トップへ | 後記事(2008/03/10)>> |