フットボールの犬 宇都宮徹壱

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help リーダーに追加 RSS 第70回 2008年をプレビューする(上)

<<   作成日時 : 2008/01/02 23:42   >>

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 新しい年になった。天皇杯決勝の取材を終えた私は、今年最初のコラムを書き上げて、今は遅まきながら正月気分に浸っている。みなさん、本年も『フットボールの犬』をよろしくお願いいたします。さて今回は、今年のフットボール・カレンダーをプレビューしてみようと思う。TVでは「今年は五輪イヤー」と喧しいが、フットボールは人生とともに続いてゆく。さっそく真新しいカレンダーに、今年一年の国内外のイベントを書き込みながら、あれこれ想いを巡らせてみることにしたい。それでは、まずは1月から。

【1月】
 現在開催中の高校選手権は、14日に決勝を迎える。翌15日からは、いよいよ日本代表が始動。鹿児島県指宿市で合宿を行い、26日にチリ、30日にボスニア・ヘルツェゴビナとテストマッチを行う。岡田武史監督にとっては、これが「第2次政権」で初のゲーム。試合内容以上に、チームの輪郭と方向性を見極めたいところだ。

【2月】
 6日、いよいよワールドカップ・アジア3次予選がスタートする。日本はホーム・埼玉で、まずはタイと対戦。その後、17日からは舞台を中国・重慶に舞台を移し、東アジア選手権で北朝鮮、中国、韓国と対戦する。この大会は女子代表も参加するので、佐々木則夫新監督の采配にも注目したい。

 この東アジア選手権と同時期、20日から23日にかけて、ハワイでパンパシフィックチャンピオンシップ2008というクラブの大会が開催される。その名のとおり、日本、アメリカ、オーストラリアのクラブが環太平洋の王座を決するというもので、Jからはナビスコカップ優勝チームのガンバ大阪が出場する。大会の意義もさることながら、ようやくナビスコ覇者にもインセンティブが与えられたのは大きい。今大会は東アジア選手権があるので、残念ながら現地で見ることができないが、大会の成功と発展を願って止まない。

【3月】
 季節は春。いよいよ国内リーグの開幕である。1日にはゼロックス・スーパーカップ、その翌週の8日と9日には、J1J2リーグが開幕する。おそらくJFLも、その次の週から開幕するはずだ。そして12日からは、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)もスタート。今季、Jからは鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、そしてディフェンディング・チャンピオンの浦和レッズが出場する。このうち浦和は、決勝トーナメントからの出場。今年はアジアを舞台にJクラブの対戦が実現するかもしれない。

【4月】
 トップリーグに続いて、4月には全国各地の地域リーグ、そしてなでしこリーグも開幕する。ひところ、欧州に合わせて「秋季開幕」が議論されたこともあったが、個人的には桜咲く頃の開幕が最も日本に適していると確信する。理屈ではない、生理的な季節感による。わが国における春開催は、当分の間、動くことはないだろう。なお20日には、北京五輪の組み合わせ抽選会が行われる予定だ。

【5月】
 いよいよ欧州のフットボールシーンも大詰め。そして21日には、UEFAチャンピオンズリーグ決勝が行われる。今年の舞台は何と、モスクワのルジニキ・スタジアム。1980年のモスクワ五輪のメイン会場であり、その後はスパルタク・モスクワのホーム・グラウンドになっている。収容人数は10万で、現在は人工芝だが、このファイナルに際しては天然芝に張り替えられるそうだ。こうした贅沢なことが可能なのも、かの国のバブル経済を反映したものなのだろう。ルジニキもモスクワも、もう7年くらいご無沙汰しているが、街の風景も物価もすっかり当時とは様変わりしたそうだ。

【6月】
 今年一番のイベントといえば、やはりEURO2008に止めを刺す。今大会のホストカントリーはオーストリアとスイス。ベルギーとオランダによるEURO2000以来となる共同開催である。大会期間は7日から29日まで22日間。開幕戦はスイスのバーゼル、決勝戦はオーストリアのウィーンで開催される。

 今大会で特徴的なのは、ホスト国が決して強豪とは言い難い点にある。最新(昨年11月)のFIFAランキングによれば、スイスが44位、オーストリアにいたっては94位である。他の14チームは、いずれも両国のはるか上をいっており、最も近いのがスウェーデンの24位。ところが、スイスとオーストリアはシードされたため、組み合わせ抽選会は阿鼻叫喚の連続となり、グループC(オランダ、イタリア、ルーマニア、フランス)のような究極の死のグループが生まれることとなった。

 今大会は久々に東側のチームが活躍してくれそうだ。個人的には、世代交代が進んだクロアチア、名将ヒディンク率いるロシア、そして予選でポルトガルに勝ち越しているポーランドあたりに注目している。さすがに優勝は難しいだろうが、何しろ前回大会はギリシャが優勝しているのだ。今大会も驚きの結末が待ち受けているかもしれない。

 ――と、ここまで書いたところで紙幅が尽きた。7月以降については、回をあらためてプレビューすることにしたい。


photo:070 EURO2008の会場のひとつクラーゲンフルト…クラーゲンフルト 2007


宇都宮徹壱/Tetsuihi Utsunomiya
1966年、東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、欧州を中心に「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。誰にも顧みられない鄙びたスタジアムと、当地で飲む酒をこよなく愛する。著書、『幻のサッカー王国』『サポーター新世紀』(いずれも勁草書房)『ディナモ・フットボール』(みすず書房)

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